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LOVE MINUS ZERO|北上次郎編[北方謙三、船戸与一他]

LOVE MINUS ZERO ネオ・ダンディズム
都市の野生
音楽を読む、物語を聴く


愛と欲望と暴力がうずまく都会の片隅
に描かれた9つのドラマ・9つのリアリズム
LOVE MINUS ZERO-KAI BAND

CBSソニー出版 1985/6/1[ISBN4-7897-0187-5


LOVE MINUS ZERO・・・・多方面メディアで展開された実質的な甲斐バンドのスタジオ最終アルバム('74-'86)。
コミックモーニングにも確か出ていたようだが、こちらはダンディズムがキラリと光る、ハードボイルド小説集となっている。

収録曲(タイトル)と作家名を・・・。

デッド・ライン 大沢 在昌
フェアリー(完全犯罪) 鏡 明
ラヴ・マイナス・ゼロ-風と女- 北方 謙三
悪夢 森 詠
キラー・ストリート 船戸 与一
TRY 内山 安雄
野獣 亀和田 武
冷血(コールド・ブラッド) 夏 文彦
夜のスワニー 西木 正明

実のところ自分はハードボイルド小説というものにこれまで触れた事はなかった。
そのきっかけを作ってくれたのは、この小説集だったのかもしれない。
アルバムの収録曲のタイトルだけで、物語はその詩からインスパイアされたものではなく、各自のオリジナルになっている。
その中でも気に留まり今まででも何度か読み返しているのは、船戸与一が書いた「キラー・ストリート」であった。
どこか無情な無駄な死とか、世間からは風化してしまう空しさというか後味を感じたものだ。

この本の話からはそれてしまうが、この後北方謙三の世界にハマる事になる。
「檻」を読んでその後、本屋で北方謙三のコーナーに行き片っ端から買い漁るようになった。
心に残ったのは「逃れの街」が抜群に良く、「荒野」シリーズにおけるこだわりの世界などシリーズになっているものに目を向ける事が多い。

しかし、この類の・・いや北方作品しかロクに読んでいないので、類と一括するのはまずいのかもしれないが、主人公が・・側近者が・・悲しいかな死んでしまうのだ・・・。
最後の最後まで頑張ってこちらの心に染みいってきているキャラクターが死んで行く様は、小説に入り込んでいる身としては悲しい別れとなる。
好きなバンドのアルバム名とその収録曲名に沿った小説集。
アルバムの曲をかけながら読んで見る本じゃないようには思えるが、アルバムの持つ独特の空気、危なげな雰囲気は本を読むシチュエーション作りには効果があるかもしれない。

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